「観勢寺」の名前の由来を住職さんに聞きました

今日は「観勢寺」の名前の由来を、内野住職に聞いてみたいと思います。



――さっそくですが、観勢寺は、なぜ観勢寺なんでしょうか。

(住職)これは「観音菩薩」と「勢至菩薩」から、「観」と「勢」を一字ずつとって名づけられているのだと思います。


――ん?観音菩薩と勢至菩薩とは、どんな仏さまでしょうか。

(住職)仏さまではなく、菩薩です。


――えっ、仏と菩薩って違うんですか。

(住職)はい。仏さまというのは、「仏のさとり」を開かれた方だけをいいます。菩薩というのは、その仏のさとりを「求めている人」です。だから仏と菩薩は違うんですよ。


――なるほど。しかし菩薩にも、いろいろな菩薩がいらっしゃると思いますが、なぜその中で、観音菩薩と勢至菩薩なんでしょうか。

(住職)いい質問をされますね。


――ありがとうございます。

(住職)実は、観音菩薩と勢至菩薩は、阿弥陀仏の脇侍(わきじ)といわれる菩薩で、阿弥陀仏の智慧と慈悲を表す菩薩なんです。


――すみません。急に難しくなったような……。阿弥陀仏とは、どんな仏さまでしょうか。

(住職)立ち話もなんだから、ちょっと中に入られ。


――はい、失礼します。

(住職)まずはじめに仏教はお釈迦さまが説かれた教えですが、お釈迦さまは一生涯、阿弥陀仏という仏さまのましますことと、その阿弥陀仏のなされているお約束、本願一つを明らかにされたのが、仏教なんです。


――えっ、そうなんですか。

(住職)そう。親鸞聖人が「正信偈」にはっきり教えてくださっているんですよ。ほら。

「如来所以興出世(如来、世に興出したまう所以は)
 唯説弥陀本願海(唯、弥陀の本願海を説かんとなり)」

ここに「お釈迦さまがこの世におでましになって仏教を説かれた目的は、唯、弥陀の本願海(阿弥陀仏の本願)一つを説かれるためであった」と言われているでしょう。


――ほんとうですね。その阿弥陀仏とは、どんな仏さまなんでしょうか。

(住職)そこです。この地球で、仏のさとりを開かれた方はお釈迦さまただお一人ですが、そのお釈迦さまが、大宇宙には地球のようなものが数え切れないほどあって、数えきれないほどの仏さまがましますと説かれているんです。それらの仏を「十方諸仏」というんです。だから仏さまは一人じゃなくて、大宇宙にはたくさんいらっしゃるんです。

 それら大宇宙に無数にまします仏さまの中で、王さまの仏が「阿弥陀」という名前の仏さまなんです。これを「本師本仏(ほんしほんぶつ)」と言われます。

 本師本仏とは、先生ということです。地球上ではお釈迦さま以上に偉い方はありませんが、大宇宙からいえば、阿弥陀仏がいちばん偉い仏さまで、お釈迦さまは阿弥陀仏の弟子であり生徒さんという関係なんですよ。


――そうだったんですか。

(住職)もちろん、ただ先生とは言われません。阿弥陀仏が、仏の王とか本師本仏といわれるのは、それだけの理由があるんです。


――それはどんな理由でしょうか。

(住職)仏さまという方は「智慧」と「慈悲」の覚体といわれ、みな、智慧と慈悲をもっていらっしゃるんですが、阿弥陀仏が諸仏の王といわれるのは、阿弥陀仏の智慧が、諸仏にずば抜けて優れているからなんです。智慧とは光明ともいって、仏さまの念力、仏力のことです。分かりやすくいえば、私たちを助ける力、パワーです。その私たちを救うお力が、ずば抜けておられるのが阿弥陀仏という仏さまなんです。だから本師本仏といわれるんです。


――すごい仏さまなんですね。

(住職)そうです。お医者さんに例えれば、どの医者も助けることのできないような難病を、ただ一人、治すことができる世界一の名医が、阿弥陀仏という仏さまなんです。だからお釈迦さまは一生涯、阿弥陀仏の本願一つを私たちに説いていかれたんです。その阿弥陀仏の素晴らしい智慧と慈悲を表すのが、観音菩薩と勢至菩薩です。


――どちらが智慧で、どちらが慈悲を表すのでしょうか。

(住職)観音菩薩が慈悲で、勢至菩薩が智慧を表します。これでお分かりのとおり、「観勢寺」という名前の中には、阿弥陀仏の智慧と慈悲がおさまっているんですよ。


――とても尊い名前のお寺なんですね。

(住職)そうでしょう。そしてその阿弥陀仏の智慧と慈悲の結晶が「南無阿弥陀仏」の御名号です。どんな人も、聞く一念の瞬間に南無阿弥陀仏を頂いて絶対の幸福になれると教えられているのが親鸞聖人の教えです。だから観勢寺も御本尊は「南無阿弥陀仏」なんですよ。お参りしていかれ。


――なんだか今日は、とても不思議なご縁をいただきました。

(住職)またいつでも聞きに来られ。


――はい。ありがとうございます。


「観勢寺」というお寺の名前がとても尊いことが分かり、すっかり好きになってしまいました。住職さん、またよろしくお願いします。